水茎の跡 001
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<インターネット上の闇市>
 違法コピー防止機能がない圧縮音楽「MP3」が、急速に普及したのは1998年頃からだ。1998年12月米レコード産業協会を中心に、MP3 対策「SDMI」を設立した。年が明けると15万曲が MP3 形式で流通し、米国の学生 75%がそれを聞いている。 1999年の中頃になると、100万曲もの楽曲がインターネット上に存在していた。
 SDMI は素案を発表するが、同年末になってもその技術仕様は決まらない。SDMI がもたつく間に、MP3 交換サイトである「Napster」が登場した。米国の19歳の大学生ショーン・ファニングが始めたファイル交換サービスだ。利用者同士がCDデータの海賊版 MP3 を、物々交換するネット上音楽闇市である。
 米レコード産業協会 RIAA は 1999年12月、著作権法違反をたてに提訴した。2000年7月「海賊版を排除しない限りサービス停止を命ずる」という裁定が降りた。Napster の最盛期 2001年2月の利用者は 7000万、楽曲は 27億9000万にのぼる。

 現在、有料サービスに生まれ変わろうと模索している「Napster」。1月の10日、ようやくそのプレビュー版を披露した。しかし、有料で客がつくだろうか。 実はそうこうする内に、元祖 Napster を超える第2世代のクローンが登場しているのだ。Aimster、Gnutella、Audiogalaxy、MusicCity.com、Kazaa、Grokster等など、数も多い。「P2P(ピアツーピア)企業」という。いや、企業と呼べるかどうかも怪しい。
 例えば月に数10万人が利用する Aimster。ニューヨークの父娘の家内労働ビジネスだ。利用者が5万人増えるたびに、300ドルのパソコンを追加して対応している。涙ぐましい実情である。彼らのサービスは無料、もしくは月額 3、4ドル程度という。主な収入源は広告だが、地下経済にうごめく業者に大した広告主がつくはずはない。微々たるものである。とても営業利益など、出せるような状態ではないのだ。
 このような零細業者を経由して、月に 30億本もの海賊版が出回るのである。

 映画業界でも、とんでもない大事件が起こっていた。小さなプログラムだ。それはちょうど「ナプスター」の出現で、音楽業界が大騒ぎしている頃である。1999年の秋、当時15歳のノルウェイ少年2人が開発した「DeCSS」だった。なんと DVD の複写防止機能を取り除くプログラムだったから、さあ大変である。これを使えば、DVD の記録内容暗号解除の状態でハードディスクに保存できる。
 少年達がインターネットで公開したので、DeCSS はハッカーの間で瞬く内に広まった。米映画協会MPAAは著作権法DMCAを盾に、DeCSS の掲載やリンクのサイトを提訴した。ところが、プログラムを印刷したTシャツを売る業者まで現れる始末である。
 「今ネット配信ビジネスを始めれば、まだ間に合う。傷口は広がらない。」確かにブロードバンドはまだ米国では 10%以下。しかし、映画業界の目算は甘かった。2001年夏の「パールハーバー」や「シュレック」、「トゥームレイダー」など、ハリウッドの超大作が封切りと同時にコピーされ、ウェブ上に出回ってしまった。
 ネット上を行き交う海賊版映画ファイルは現在、月に 1200万本にも上っている。

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